本来ならば、今回の休日は大山登山の予定だった。
しかし、残念ながら鳥取方面は天候が微妙(雨ではないが、曇り予報)だった為、急遽次週へ持ち越し。
剣山や前回の石鎚のように、せっかくの百名山の頂上でガスで展望が得られないというのは、やはり出来る事なら避けたいのだ。
そしてポッカリ空いてしまった休日。
四国内は天気良さそうなので、近場の山も考えたが、今回は久し振りに島旅。
瀬戸内海の小島、志々島へ行ってきた。
志々島は周囲3.8km、人口17人の本当に小さな島。
この島には樹齢1200年という大楠があるという事で、ずいぶん前から訪れてみたいと思っていた島だ。
定期船は三豊市宅間にある宮の下港からと須田港から出ている。
須田港からの船は、志々島の隣にある、粟島(志々島に比べるとずいぶん大きい島)経由となるため少し時間がかかる。(約50分)
今回は直接志々島へ向かう、宮の下港からの船に乗り、8:30、出発だ。
切符は船内の自販機で購入し、船の人に渡すシステム。
片道340円。
出発時点で天候は笹曇り、風はほとんどなく、ムワッと湿度が高い感じだったが、あれよあれよという間に西から天候は回復。
約20分、志々島へ到着するころには青空がのぞき始めていた。
なにか島に歓迎されているような気がしてきて、嬉しくなる。
8:50 あっという間に志々島着。
小さな漁船が数多く停泊している、石積み造りの港に降り立つと、遠くで山羊の鳴き声が聞こえてくる。
下調べでは、島では数頭飼われているらしい。
それ以外に聞こえてくるのは、鳥のさえずりと、波音だけで自動車などの人工的な音は聞こえてこない。
地元の方だろうか、釣竿を持って堤防を歩いている方が一人見えるがそれ以外に島民の姿はない。
港の待合所みたいな所に数台の自転車が置かれていたが、おそらく暫く使われていないのだろう、埃をかぶっていた。
本当に、静かな、静かな島だ。
このカラフルな屋根をもつ小さな家は、実はお墓である。
両墓制といって、遺体を埋めるお墓(埋め墓)とお参りするお墓(参り墓)を分ける風習の名残がここには残っている。
海岸沿いに並ぶこれらが埋め墓、そして参り墓は島の中腹にあるお寺、利益院にあるとの事だ。
海岸沿いをあっという間に見て回って、いよいよ大楠へ向かう。
道のりには看板が各所に設けられていて迷うことはない。
道中目立つのは、草木に飲み込まれつつある廃墟だ。
多くの、家主を失った家屋が緑の波に飲み込まれている。
明治~大正時代の最盛期には漁業、農業で栄え、島民は優に1000人超を数えたという。
また一時期花き業で栄えた頃は様々な種類の花木で島全体が花畑のようだったらしい。
100軒を超えた栽培農家も今では1軒も残っていない。
そこかしこに人間の、生活の痕跡が色濃く残っている。
昔は学校もあったというから、島内を多くの子ども達が走り回っていただろう。
この狭い島に1000人を超える人が住んでいたのだ。
それはそれは賑やかだったに違いない。
途中、2人の島民のおばあさんに携帯蚊取り線香の無料貸し出しがある事を教わる。
どうやら大楠の周りは蚊が半端なく多いとの事。
我々のような観光客の為に商店の方が準備してくれているようだ。
お言葉に甘えてお借りすることとする。
暫くお話させて頂いて、写真まで撮らさせて頂きました。
ほんと、いい笑顔!
先へ進むと、高台から集落を見渡せるポイントへ到達。
多くの民家が見えるが、おそらくほとんど空き家だろう。
整備された道をしばらく進むと、早くも大楠を見てきた先行の観光客の方が戻って来た。
やはり、蚊が凄いとの事。
蚊取り線香借りてきて良かった。
9:30 大楠に到着。
圧倒される。
朱色の鳥居には大楠神社とある。
同じく朱色の屋根の祠が木の根元に祀られている。
否応なしに、この志々島の守り神、島の主という雰囲気だ。
とにかく八方に広がる枝ぶりが凄い。
新葉を鈴なりに付け、その樹勢はまだまだ良好に見える。
とにかく、撮りたい。
こんな気分にさせられたのは、黒岩山の八方ブナ以来。
気が付けばあっという間に50分間、撮り続けていた。
しかしなんとも撮り切った実感が湧かない。
余りの樹の迫力に圧倒され、完全に撮らされた感がする。
残念ながら帰りの船の時間が迫っているので、今回はここまで。
結局、時が止まったようなこの島に来てもなお、時間に追われるている。
10:20 撮影を切り上げて、展望台へ向かう。
大楠から西へほんの2、3分で到着。
綺麗に刈り取られた山肌に、展望小屋が建てられていた。
この頃には晴れ間も広がって気温も急上昇。
とりあえず、とても暑い。
何もしなくても汗が噴き出る。
この小屋の陰が本当にありがたかった。
10:30 水分補給を済ませ、先を急ぐ。
残された最後の目的地、志々島の最高峰を目指す。
看板には健脚の方で15分~25分とある。
帰りの船の時間が11:30発なので、いまいち微妙だったが、とりあえず行けるとこまで行ってみようと思い先へ進む。
うっそうと茂る暗い樹林帯の中を進む。
ここも道は整備されている。
後で判明したが、年2回草刈り等の整備が行われているようだ。
横尾中継水槽の脇を通り抜け、10:40 志々島の最高峰、横尾の辻(標高109m)へ到着。
大楠の分岐から高低差はそんなにないので、すんなり行けた。
頂上にはベンチや机が置かれている。
三角点もある。
ここからの眺めは絶景。
360°遮るものがない。
瀬戸内海に浮かぶ島々が見渡せる。
ゆっくりしたいところだが、そうもいかない。
少し休憩して、来た道を引き返す。
そして行きがけにスルーしてしまっていたお寺、利益院に寄ってみる。
残念ながら、現在では廃寺となっているようだ。
建物はあちこち傷んでいて、廃墟と化しているが、境内は手入れされているのだろう、無造作に草木に覆われてはいない。
11:15 港へ到着。
行きがけには開店していなかった休憩処『くすくす』が開いているようなので、寄ってみる。
ガラッと扉を開けるとクーラーの効いた涼しい店内。
生き返る。
今日一緒の船で島にきた方々がほとんど皆さん休まれていた(^^;
アイスコーヒーを注文。
冷たくて、美味しい。
10年ほど前神戸から転居されたという店主さんから色々島について伺った。
島内外から人が集まって運動会が開かれること、夏の盆踊りでは93才のおばあちゃんも元気に踊る事。
93才?
蚊取り線香を教えてくれたおばあちゃんだろうか?
確かに元気そうだった!
船の時間になったので、お礼を言って店を出る。
休憩処の前には小さな花畑と案山子たち。
11:30 迎えの船に乗る。
あっという間の3時間。
船のエンジン音で一気に現実に引き戻される。
志々島は今回初めて訪れたが、ずいぶん気に入ってしまった。
下調べでは何もない島だとあった。
確かに、車やバイクもなかったし、コンビニもない。
※商店は一つある、今回は閉まっていたけど(^^;
自販機も見つける事が出来なかった。
けど、見どころは沢山ある。
親切な島民の方々とのふれあいもそうだし、大楠は他ではなかなか見られないぐらい立派な木で一見の価値ありだ。
島を廻る登山道のうっそうとした照葉樹林のトンネルもいい。
もちろん最高峰からの眺めも最高だ。
埋め墓や、廃墟となりつつある家屋も感慨深い。
小さな浜もあって泳げそうだし、魚も釣れるだろう。
今回時間切れで会えなかったが山羊もいる。
夏休みに子ども連れで来たりしたら思いっきり楽しめそうだ。
船で片道20分、簡単に来られて、海も山も楽しめてアウトドア好きの小さな冒険心を優しく満足させてくれる、そんな、実は何でもありの島だった。
また近い内に確実に再訪するだろう。
宜しくお願いします(^^)