どうしても、暗くなってしまう。
私の性格でない。
いや、もちろん暗いことは暗い。
それは間違いはないのだが。
・・・。
写真の事だ。
先日、所用で室戸を訪れる機会があり、久し振りに国道沿いアコウの樹を訪れてみた。
夕刻五時過ぎ、日は伸びたとはいえ、まだ六月というのにカンカンと照らしていた太陽の、昼間の勢いはもうない。
平日なので、高知の一大観光スポット室戸岬といえど、人影はまばらだ。
もちろん薄暗いアコウの樹の周りには誰もいなかった。
アコウ。
この樹は、本当に不気味である。
幹から縦横無尽に伸びる根は、岩の隙間という隙間へ侵入し、競り上がり、沈み込み、そして包み込む。
それでは飽き足らず、地表まで伸びた根は、八方に広がりながら、次の獲物を求めて落ち葉の海を泳いでいくようだ。
別名 『締め殺しの木』
その恐ろしい名前のイメージに多分に影響を受けている事は間違いないが、それだけではないだろう。
とにかく夕方の、この薄暗い樹の前に一人で立ってみると、とても落ち着かない。
その不安感なのか、実際暗いせいなのか。
写真はどんどん暗くなる。
滞在時間はほんの15分程だった。
見上げると太陽光が差し込んできている。
だが、普通の、朗らかな一般的イメージの木漏れ日とはまったく異質だ。
落ち着きはまったく取り戻せず、逃げるようにこの場を後にした。