森の旅 

To the world where you've never seen.

蟠蛇ヶ森  海抜0mからの旅

約9分


山歩き日 2017年12月17日

高知県の須崎市に蟠蛇ヶ森という山がある。

標高769m。

四国百名山にも選ばれている山で、須崎湾のすぐ真北に位置し、山と南側の須崎湾との間のわずかな平地には須崎の街並みが広がっている。

山頂にはアンテナ施設等があり、頂上まで舗装道路も取り付けられていて、中腹から裾野にかけては集落の民家が立ち並び、雪割桜の名所としても有名だ。

登山のガイドブックにもたびたび登場するのだけれど、頂上まで車道がある事やアンテナ等人工物が多い事などがあってしばらくの間、なかなか登ろうとは思えなかった。

ただ最近須崎湾から蟠蛇ヶ森を撮影した写真を見て、その堂々とした山容に登ってみるのもありかもしれないとちょっと思い始めていた。

そして、今回。

本来なら早朝より登山の予定だったが、朝一仕事が入った為予定変更。

午後からでも登れる近場の山へしか行けなくなり急遽白羽の矢が立ったのだ。

しかし、ただ登るのも味気ない。

不意に思いついたのが海から登ろうだった。

山頂が海から近いし、海岸から頂上まで歩いて行けば、いわゆる”sea to sammit"なるものを達成する事になる。

よくみなさんのブログ等で富士山へ海抜0mから登る記録がいくつも出てくるが、片道40kmから50km、それも日帰りで往復する等(もちろん泊りで行く人が多数だが)、とても軟弱なワタクシが挑戦できるものではない。

もはやそのレベルになると、単なる登山、ハイキングの範疇を大きく逸脱してしまっている気がする。

選ばれし者たちが挑戦できるステージだ。

ワタクシにはとても現実的ではない。

ただただ憧れるだけだった。

自分の足で、1つの山を上り詰める。

ロマンである。

しかし、そう考えていると、なんとなく地方の平凡な里山である蟠蛇ヶ森が急に富士山に見えてきたから不思議だ。

標高も769m、3000mを無理やり足してみるとほぼ同一だ。

お椀を伏せたような形もそっくりだし、富士山レーダーはないが、なんかアンテナのようなものは何本も立っているし大丈夫ではないか。

そして遂に決定が下される。

ここ蟠蛇ヶ森を心の富士山と見なし、海抜0mから頂上まで登り詰め、輝かしい自分登山史の中に”sea to sammit"回数 1回と誇らしく書き記そうではないか。

そしていつの日か山ガールに取り囲まれ、STS(sea to sammit)の経験ありますかっと聞かれても、もちろんあるサっとサラッと答えることにしよう。

もちろん山名は絶対伏せなくてはならない。

富士山だろうが、蟠蛇ヶ森だろうが、1回は1回なのである。

それではスタートだ。

スタートは須崎湾の最奥、2~3台駐車スペースがあったので桜川の河口に架かる橋からとした。

11:11 準備を済ませ出発。

正面にどっしりとそびえるのが蟠蛇ヶ森だ。

随分遠く感じる。

とりあえず登山口がある吾桑小学校近くまで市街地を歩いて行かなくてはならない。

歩き始めて5分、早速セブンイレブンを発見。

いきなりの休憩だ。

そもそも早朝仕事になったおかげで朝食も食べていなかった。

お稲荷さんとフランクフルトでエネルギー補給を済ませ、頂上で食べる弁当も入手し、再スタート。

それにしても天気が良いので気持ちいい。

市街地なのでいろんなルートがあるが、とりあえず正面の山へ向かうように進む。

多ノ郷駅を横切り、住宅地を抜け、388号線(通称中村街道)に突き当たるまで進む。

中村街道へ出たら右へ折れ、後は道なりに歩いて行く。

やはり登山靴での舗装路歩きはスニーカーなんかに比べると歩きにくい。

暫く行くとGSが見えてくるので、この交差点を左へ進む。

サクッと書いているがこの時点で時刻は12:00。

休憩分を差し引いてもすでに約40分程度歩いている。

少し進むと蟠蛇ヶ森への看板(左折)が見えてくるが、これは車道を利用する場合の看板で、徒歩での登山口はまだ先にある。

更に道なりに進む事10分、ようやく県道脇の蟠蛇ヶ森登山口へ到着だ。

付近に駐車場は無さそうだったので、車で来た人は付近に駐車スペースを探す必要がある。

この地点で標高は21mぐらい、距離にして約4km。

ほぼフラットな車道歩きだった。

12:10 登山口スタート。

歩き始めてすぐに、小さな祠と大木。

立派な木だ。

今回の山旅で頂上まで目に付いた木々の中で一番大きかったんじゃないだろうか。

少しずつ高度を上げながらぶんたん畑の横をすり抜ける。

陽だまりの、明るい道で気分がいい。

やがて尾根へ出ると、道は緩やかになり、杉林の中を歩くようになる。

12:28 桑田山神社の広い駐車場(115m)に到着。

どうやらここに駐車して登り始める方が多いようだ。

ここで再び車道を歩くようになる。

神社右側の道を行くとすぐにY字の分岐。

おじいさんが日向ぼっこしていて、左へ進めと教えてくれる。

今日は2組通過したよと教えてくれたが、一日ここでいたのだろうか?

なんともゆっくりした時間の流れを感じる。

少し行くと標識発見。

一瞬間違いじゃないかと目を疑ったが、民家と民家の間の畑を横断するらしい。

それとなく踏み後もある。

石垣や畑の間を縫うように進む。

里山と聞いて思い浮かべる情景そのままが目の前に広がっている。

やがて車道に出た。

ここを横断し手すりの付いた道を進む。

要はつづら折りについている車道を登山道は何回も横断しながら直登するイメージだ。

この辺りから雪割桜ゾーン。

同じ場所で数年前に撮った写真。

開花時期には毎年桜まつりが開かれていて、家族で訪れた時の写真だ。

この辺りも一面桜の木だらけだ。

満開時期はさぞかし綺麗だろう。

なんとなく、来る時期を間違えたような気がしてきた。

やがて車道に出る。

こんな感じで車道歩きと山道歩きを交互に繰り返しながら標高を上げて行く。

適当に歩くと迷ってしまいそうだが、ピンクテープや車道に矢印が書いてくれていたりするので注意深く進めば大丈夫だ。

このような看板やピンクテープが至る所にある。

随分登ってきた。

奥に見えるのが須崎湾。

標識通りに進んでいくと、いよいよ樹林帯に突入。

どんどん自然林の中を登るとまたしても車道に出る。

車道を右に行くとベンチがある展望ポイント到着。

この辺で標高340mぐらい。

振り返ると鉄塔がある。

この鉄塔右側を進む。

13:05 鉄塔ポイントを出発。

ここからようやく本格的な登山道といった感じの道になり傾斜も少し急になる。

薄暗い杉林の中を進む。

やがて竹林に変化してきた。

そして再度車道に出る。

標識に従い車道を左へ進む。

やがて再度標識。

車道から山道へ入る。

ここからの道もまずまずの急登で、少し荒れている。

倒木を跨いだり、くぐったりしながら進む。

しかし事あるごとに赤テープがあるので慎重に進めば大丈夫だ。(視界が悪いと要注意かな。)

やがてまたしても車道に出るのでそのまま車道を歩く。

いよいよ頂上直下にきた。

陰地には雪が薄っすら残っている。

14:12 蟠蛇ヶ森頂上着。(769m)

スタート地点からちょうど3時間だ。

頂上にはベンチと展望台が設置されている。

早速展望台に上ってみるが、これが案外曲者だ。

ワタクシのような想像力豊かなタイプの人間には足元丸見えのスカスカ階段は刺激が強すぎる。

手すりをしっかり握りながらなんとか上り詰める。

苦労したかいがあって展望台からは360°の大絶景が広がる。

南向きに須崎市街、そして太平洋。

拡大すると・・・

見えた!

スタート地点に駐車している自分の車が見える。

画面中央左寄りの赤白煙突の右側に橋が見えると思うが、そこがスタート地点だ。

南西方向。

中央を流れる川は新庄川。

生きている二ホンカワウソが最後に目撃された事で有名だ。

東方向。

手前のアンテナ山は虚空蔵山。

その向こうに高知市の街並みが見える。

北西方向。

冠雪しているのは中津明神山。

まだ登ったことのない山だ。

もう少し北寄りに石鎚山も見えるらしいのだが、今日は靄が掛かっており見えないみたい。

西方向には風の里公園という風力発電施設。

なんと20基あるらしい。

その奥の薄っすら雪化粧しているのは天狗高原だろうか。

一通り景色を堪能したら、ランチタイム。

風もなく、あたたかな陽だまりの中ゆっくり食事しながら休憩する。

サイコーだ。

不意に日没までここにいて夕日を撮ろうかなとも思ったけど、帰り道も距離があるのであきらめて下山する事にする。

14:45 先着の2人組の方に挨拶して先に下山開始。

先程通過して1時間も経っていないのに随分陽が傾いたように感じる。

樹林帯の中もかなり薄暗くなっている。

頂上で夕日まで粘らなくて良かった。

下りはあっという間。

15:40 桑田山神社の駐車場まで下りてきた。

そのまま下り、15:50 県道脇の登山口着。

ここから車道歩きだ。

行きとはルートを変えて56号線沿いを歩く。

ここまで来ると結構疲労感が出てきてなかなかしんどい。

先程までいた頂上が見える。

随分歩いたなあ・・・

そしてついに。

すっかり陽が沈んだスタート地点へ戻って来た。

時計は16:35を指している。

しっかり1時間の舗装歩きだった。

遂にゴールだ。

”sea to sammit” 快挙達成だ。

そして振り返る。

夕日に照らされる蟠蛇ヶ森。

よくあそこまで行けたもんだ。

そしてよく行こうと思ったもんだ。

結局舗装道路歩き往復8km、山道往復8kmだった。

山道でも随分舗装道路歩きもあったので、実際の未舗装山道は半分以下だった事になる。

しかし、こうやって登ってみると、ますますどっしりとした、迫力のあるいい山だと思う。

決して他にはないような絶景があったり、見たこともない巨木が群立する森があるわけでもない。

正直どうして四国百名山なんだろうと思ったりもした・・・

人里離れた、原生の自然に囲まれた山登りももちろん大好きだし、今まではそれこそが登山の醍醐味と思っていたけれど、たまには息抜きのように人々の息遣いが濃いこんな里山に登るのもいいのかもしれない。

なんか登山というより裏山探索歩きというか、ほっこり山旅ができる事間違いない。

いろいろ疲れた時にまた訪れてしまいそうだ^^;

とりあえず富士山ではないが、海抜0mから(本当は橋の上からなので3m^^;)山頂まで自力で到達できた。

普通に登るよりやはり感慨深い。

無駄に道路歩きもあるし、時間もかかるけど・・・

海に近い山があれば、また挑戦したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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