森の旅 

To the world where you've never seen.

星野道夫 悠久の時を旅する

約4分


星野道夫 悠久の時を旅する

ずいぶん暖かくなってきた。
今週も所用があり山へは行けず。
しばらく悶々とした日々を過ごしている。
あっという間に季節は巡り、ちらほら桜の開花が伝えられ始めている。
桜は何年経ってもなかなか思い通りに上手く撮れない。
今年はいい写真が撮れるだろうか?

さて今日は、ある本のお話を一つ。
あまりに山へ行けなさすぎてブログ更新もままならず。
こんなお話でお茶を濁しまくるという算段。
ぜひお付き合いを宜しく哀愁。

突然だが、みなさんが山歩きや森歩きを始めるきっかけはなんでしたか?
人に誘われてなんとなく、体力作りの一環として、強制連行、頂上で美味い飯&酒に溺れるため、男を磨く為、女を磨く為、1upする為、そして下界のしがらみから逃れる為などなど皆さんそれぞれの事情があったと思う。

私が山へ登りたいと思ったのはある一冊の本との出会いがあった。
別に大げさに表現したわけでもなく、本当にそうだったのだ。
とある書店でふと手に取ったその1冊の本が私の価値観を大きく変えたと言ってもいい。

その本とは。

悠久の時を旅する

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ズバリ 星野道夫さん。
大御所中の大御所。
ベタすぎっ?
まあそう言われるかもしれないけど、特にこの【悠久の時を旅する】には本当に衝撃を受けた。
発行年は2012年。
自分が手に入れたのが2013年〜2014年頃のはず。
それまで釣り一辺倒だった私が即座に情報を集め、登山用品を買い揃え、山を歩き始めた。
それぐらい影響を受けたのだ。

山や自然を愛する、それも30代、40代から上の年齢層の方達なら星野道夫さんを知らない人はいないだろう。
1973年の大学時代にアラスカのシシュマレフ村での生活からどっぷりアラスカの大自然に魅せられ、1996年のヒグマの事故による逝去まで多くの写真や文章を発表された方だ。
その写真たちは本当に素晴らしく、愛おしい。
ムースやグリズリー、白頭鷲などが、本物かよっと見まごうような、完璧な大自然の中で、見たこともない姿で存在している。
そしてその世界での人間の営み。
付かず離れずの微妙な距離感で、淡々と撮られた写真。
でも、どれも凄く優しさを感じる。
例えばヒグマがサケを取っている場面。
水しぶきが舞い上がって、歯と爪をむき出しにしてサケを喰らうシーン。
クマという動物の圧倒的な存在感、威圧感が表現されるところだ。
だが、星野さんの写真を見るとなぜかクマが心配になってしまう。
ちゃんと獲れたか、ちゃんと食べれているか。
一年の間で多くの時間を厳しい寒さに包まれる北の大地。
その厳しい自然で同じく生活を共にしながら撮り続けた星野さんならではの写真だと思う。

【悠久の時を旅する】はそんな星野さんを1冊にまとめたような本だ。
色とりどりの写真と、貴重なエッセイが多数載っている。
私は写真と同じぐらい星野さんの書く文章も大好きだ。
淡々としながらも、とても詩的で、すぐに感情移入できる。
読んでいると、星野さんが見ている情景が目に浮かぶ。
そして、本当にそうか確かめたくなる。
撮りたくなる。
ウズウズしてくる。

印刷の質も素晴らしく、レイアウトもいい。
写真の配置や並びもおしゃれで本当にいい本に出会えたと思う。
巻末には年譜もあるので、初めての星野本としてもオススメ。
さらに旅好き、カメラ、写真好き、自然好き、動物好き、そのどれか一つでも当てはまる人にも間違いなくオススメの一冊だ。

星野さんの撮るような写真が撮りたい。
この1冊に出会って私はそう感じた。

誰かの背中を押せるだけの強さがこの本は備わっている。




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