森の旅 

To the world where you've never seen.

天狗塚 春の風に誘われて〜

約6分


相変わらず山へは行けない日々が続いている。
よく一緒に行っているTとの同行計画も何回もキャンセルしてしまう事態。
これに業を煮やしたTから渾身のレポートが届いた。
私が四国一の雨男と信じてやまないTの筈なのに、なぜか晴れ渡った天狗塚で前年の大リベンジを果たしたようだ。
彼が行く山旅で快晴とは奇跡に近い。
さてさて、どのような旅だったのかな。

山歩き日 2018年3月11日

多忙な「森の旅」管理人に代わって、暇な旅人Tがソロの山行をレポートする。

天狗塚は、日本の高知県と徳島県との県境にある剣山地の最西端に位置する。縦走路で三嶺まで繋がっており、三嶺の方が登山者は多い。また、山頂の標高は 1,812 mであり、三嶺より約80 m低い。昨年末、積雪期に登頂を試みたが、時間的制約から、撤退を余儀無くされている。しかし、ピラミダルな山容を見る度に、改めて登頂したい願望が増した。
前回の撤退戦は以下に示す内容であった。

天狗塚 無念?いや自業自得の大撤退

まず、凍結路面対策として、前回用いた、前輪駆動ではなく、全輪駆動の車輌を用いた。また、前回はタイヤは消耗したノーマルタイヤであったが、今回はスタッドレスとした。これらの組み合わせにより、雪道の走破性能は最高に近いと考えられた。前回、登山口と車輌との間で費やした時間は往復で、計約3時間であった。これを大幅に削減出来れば、登頂の難易度も飛躍的に低下すると推測した。また、登頂時期が三月中旬である事から、残雪は少ないと判断した。

 【前回のドナドナ林道】

国道439号線は、積雪は皆無であった。いやしの温泉を過ぎると、やや凍結した場所が点在した。したがって、走行には油断と緊張のバランスを取ることが重要となった。その油断時の最中、前回車輌を捨てた場所に差し掛かった。左向きのブラインドコーナーを立ち上がる際、視線の右端に、目線より大きなキュウシュウジカが映った。スローモーションのうにキュウシュウジカが森に消えていく様子が見えた。

ここで、本山行で、野生動物と接触する事が出来ると考えた。普段、「森の旅」管理人との同行ではほぼザック内で睡眠していた簡易一眼レフを首に掛けることとした。

一部凍結により滑る場所も有ったが、ほぼ問題なく9時20分には登山口に到着した。カメラを首から下げて歩くとその度に腹部の脂肪にバウンドし、精密機器としての耐久性を心配した。しかし、腹部の脂肪の柔軟性から、カメラを下山まで維持する事が可能と判断した。

9時40分、林道沿いの登山口から登り始める。積雪は無いが頂上付近の残雪に備え、アイゼンは持参した。ただ、恐らく装着が面倒になり使わないであろうと考えた。暫く見通しの良い中勾配の樹林帯を歩くと、残雪で登山道が覆われた領域に到達した。

そして、見覚えのある大きな倒木を見つけた。

さらに進むと、10時30分、1,476 ピークに到着。

このピークから一旦下がるが、鞍部からは勾配が急になる。昨年12月は積雪がそこそこ有り、小ラッセルで苦労したポイントになる。昨年の12月がこの写真である。

今回が次の写真の状態である。

残雪量は少なく、地面が見えている場所も有るが、雪が凝固して滑り易く、登山靴で蹴っても足場が作れない場所も有った。登り始めで想像した通り、悩んだ挙句、アイゼンは装着されることは無かった。滑らないよう出来るだけ雪の間から出た笹を踏んで進んだ。高度を上げると残雪が減り、歩き易くなった。しかし、気付いた時には登山道を見失う事となったのであった・・・。

幸い、天狗塚は見えており、そこに至る稜線にさえ上がれば何とかなると考え、笹原を直進した。しばらくすると登山道と合流し、一安心した。登山道は雪に隠れてしまっていたため、見失ったと考えられる。そして11時30分、前回の最終地点である久保分岐に辿り着いた。一名の登山者が、三嶺方面へ歩いているのが遠くに見えたが、他には稜線上誰もいないようだ。

前回は、午後1時30分に到着した。登山口に辿り着いた時刻が10時を過ぎており、小ラッセルを強いられた事でスピードが遅くなり、しかも帰りの林道歩きが長い事から撤退を決断したが、今回は時間的余裕がある。
天狗塚頂上へ進む事とした。途中、僅かに樹氷が残っていた。

この春に見られるのは最後となるであろう。そして、11時50分、天狗塚山頂に到着した。

山頂は登山者がおらず、見渡す限り稜線上にも誰も居ない。静かな休憩となった。雲も無く周囲を360度見渡せる展望であった。東には三嶺が見え、西は小さな池が有り、笹の稜線が続く。おにぎりで軽い昼食をとり、暫く、絶景を眺めた。三嶺までは2、3時間。往復すると、日が落ちる可能性があったので、そちらには向かわない事とした。

ここまでカメラをぶら下げたまま来たが、結局、鹿には出会わなかった。ただ、これだけ登山者が少ない山域であり、ひょっとしたら遠くに動物が見えないか、探した。すると、南側の斜面に動くモノを発見した。遠くてよく見えないが、こちらに移動している。登山者と思ったが、どうも道ではない場所を移動しているようだ。急いで持っていたスマホで写真を撮ったが、よく見えない。

カメラを構えてシャッターを切る。しかしカメラのモニターではやはり見難い。そうこうしているうちに、動く影を見失った。しかし更に遠い場所に、同じような影を発見した。動く速さはあまり早くなく、停滞しているが、影の形状は変化している様に見えた。
とりあえず写真を一通り撮影したが、見えている影が熊であったとしたら、位置的に追いつかれる可能性があると思い始めた。不安になり、急いで久保分岐まで戻った。振り返り確認するが、それらしき影は見当たらない。

ここで気を取り直し、稜線から降下する事した。登りで道を見失った場所は、間違える事なく登山道を進めたが、かなり雪が固くなっていたので、慎重に進んだ。

下山中、コメツツジらしき樹木に大きな芽が膨らみ始めているところを撮影した。

春の兆しを感じながら、せっかくなので美しいブナを探す。1,476 ピークを過ぎたところでそれらしい樹木を撮影してみる。こうして探してみるとなかなか思った様な形状の樹木が見つからない。

登山口への到着は14時30分。

帰宅後、山頂で見た影が何か気になり、PC上で一眼レフの画像を確認した。

画面中央付近を拡大すると・・・

鹿!?
大きさや脚の形状から、鹿と判断する。写真上部には他に二頭、写っている。もっと拡大して撮影出来れば・・・望遠レンズが欲しくなってきた。
最近、三嶺付近では多数の鹿の群れが確認されており、樹木の食害が深刻となっている。実際に、2年程前に名頃からの登山道で何頭か遭遇した事もあった。あの頃は熊鈴をしていなかったかもしれない。鹿が増えた一方で、熊の数は減っているようだ。しかし鹿の撮影のために熊鈴の使用をやめる英断はまだ、出来ていない。

次の山行は新緑の季節になるかもしれないが、更に生物の活動が活発化するであろう。多忙な「森の旅」管理人のスケジュール調整を希望する。




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