森の旅 

To the world where you've never seen.

鉢ヶ森 新年早々の極寒里山徘徊

約7分


山歩き日 2018年1月3日

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年の登り始めに高知県香美市にある、鉢ヶ森という山へ行ってきた。
鉢ヶ森は標高1270.3m、香美市の中心部、美良布の北に位置する山だ。
石鎚や三嶺、剣山などの山々に比べると随分マイナーな山なのでなぜ新年早々この山でないといけないのか、いまいちミスチョイス感は否めないが、まあ時間制限などもあり、今回の山行となった。
今回も同行はT。
彼は新年早々いきなり多くの山道具を家に忘れてくるという荒技で、まるで近所のコンビニへ散歩がてら買い物に行くオヤジ状態での参加となった。

登山口は2個所あるらしいが、今回は河野登山口からとした。
美良布の市街地を走る国道195号から北上、日の御子キャンプ場を目指す。
キャンプ場をそのまま通過し、さらに道なりに北上すると約10kmで、右手に岩屋大師堂の看板が見えてくる。
ここが登山口だ。
左手前の広場に駐車できるとガイドブックにはあったが、現在フェンスで閉じられており、路肩へ駐車した。
所々小さな落石はあったが、きちんと舗装された道なので、積雪がなければ普通車でも大丈夫だ。

7時20分、河野登山口(720m)を出発。
まずは中腹にある岩屋大師堂を目指す。

天候は曇り空。
時折時雨のような物も降っている。
風も強く、随分寒い。
天気予報では晴れのはず、やはり天候運は相変わらずないようだ。
まずは薄暗い樹林帯の中を進む。

スギ林の中を縫うように進む。
道自体は踏み跡もしっかりしており、迷うことはないと思う。

真っ直ぐ伸びるスギ林。
驚いたことに途中コンクリートで舗装されている部分もあった。
7時42分 岩屋大師堂(910m)に到着。
鳥居をくぐると巨石と小さな祠や石像がある。

この場所は弘法大師が飢饉や病で苦しむ村人の為に祈願した場所とされているようだ。
こんな山奥でもしっかり手が加えられているのだろう、綺麗に整備されている。
ここで小休憩し、7時52分、再スタート。

ここからの道はゴロゴロした岩が多く若干歩きにくい。
足元に注意しながら登って行く。

太陽の光がスギ林に差し込んできた。
今年山登り中の初御来光。
天候は回復してきているのだろうか?
期待が持てる。

8時6分、いきなり広場に出る。
工事中の林道だろうか?
特に工事車両等は見当たらないが、いずれここまで車で来れるようになるのかもしれない。
便利だとはいえ、なぜか寂しい。
広場を横断し、再び山道へ取り付く。

この辺りまで来るとは周りは自然林となる。
稜線が近いのか、風も強くなってきた。
寒い。

沢が凍っている。
そして視界が開けてついに鉢ヶ森が見えてきた。

写真右端の一番高いピークが鉢ヶ森だ。
手前からなだらかなピークを順番にクリアしながら山頂を目指す。
相変わらずの曇天模様、さらに粉雪が舞い出した。

標識のある地点で90度東向きに進路を変える。
ここが県境界の峠ポイント(1142m)。

登山道の両サイドにはトサミツバツツジの群生。
トンネル状になっている。
花期には最高だろうな、きっと。

斜面にはブナ林。
快適な尾根道・・・の筈なのだがいよいよ風が強くなってきた。
雪も混じり、べらぼうに寒い。
前方を歩くコンビニ散歩オヤジには辛い時間帯。
大丈夫か?

やがて広大な平原に出た。
ここはもともと笹原だったんだろうか?
今では枯れているのか、裸地となっている。
道は緩やかに登って行く。

登りきると一つ目のピーク(1219m)。
明確な印はない(見つけれなかった)が頻繁に現れる赤テープを追っていくと、自然と進路は南向きになっていく。
降り続ける粉雪が地面の色を変えていく。

1219mピークからの道は倒木が多く歩きにくい。
至る所で倒れた木が道を塞いでいるので跨いだり、迂回したりしながら先へ進む。
しかし、自然林の中の道なので雰囲気はいい。

いよいよ頂上は間近に迫ってきたが、相変わらずの風&雪でなかなか厳しい。

鉢ヶ森本体に取り付くあたりで風雪はMAXに。
コンビニ散歩オヤジもさすがにここまでとは想像してなかっただろう。
今にも一目散にコンビニへ飛び込んで、熱々の玉子と白滝のおでん辛子付きとホットコーヒーSを買いそうな体勢で先へ進む。
だがここは山の中、そんな便利でhotな施設など、ない。

いよいよ頂上間近。
前方に大ブナが見えている。
その横を通過し、ついに。
9時9分、鉢ヶ森頂上着だ。

頂上には古い祠がある。

随分古い祠だが、扉を開けると新しいみかんと酒などが備えられていた。
周りは潅木に遮れられて展望は利かない。
唯一南面だけ少し開けているが、あいにくこの天候で何も見えない。
見えない、筈だ。
だがしかし。
ここにきて寒さと展望の無さについに散歩オヤジが我慢できなくなったのだろう。
なぜ新年早々、このマイナーな里山で、このような目にあっているのか。
天気予報は晴れだった筈だ。
爽やかな冬晴れの中、ほっこり里山歩きで2018年を登り始める。
多くは望まない。
ただ、ゆっくり山が歩ければ、それでよかった。
なのに。
この天候はどうした?
なぜ歯を食いしばって登っているのだ?
なぜ鼻と耳がほっぺが赤くなる?
耳をつんざくこの轟音はなんだ?
数多の思いが、頂上展望ゼロを持ってついに大爆発。
何も見えない南側の景色を眺めながらなんと天下の鋭鋒槍ヶ岳が見えたと宣言するに至る。

問題の南側展望。
天候がよければ物部川河口辺りが見えるらしい。
まあ、確かに薄っすらと山が見える。
錯乱状態の散歩オヤジは槍ヶ岳が見えたので満足したらしい。
ワタクシは居ても立っても居られなくなり、9時20分下山開始。

登る時は登頂に必死でスルーした大ブナ。
黒岩山の八方ブナのように、大きく枝を広げている。
大きさは八方ブナより小ぶりだが、迫力十分。

ブナの撮影をしていると、いきなり天候が回復傾向に。
雪が降り止み、時折太陽光が差し込み出した。
なんと青空も薄っすら見え始める始末。
本当についてない。
あと10分、頂上で我慢すれば、本当の展望が見えたかもしれないのに。

北側の展望も登りの時に比べると大きく改善。
名残惜しいが、降らなくてはならない。
先程より雪化粧が濃くなっている道を進む。

このような形で潅木と倒木でルート自体は分かりにくい所が点在する。
だが、必ず赤テープが近くにあるので、それを追えばまず大丈夫だろう。

道中のブナ林。
里山とは思えないほど、立派なブナが点在している。
新緑の頃も見ものだろう。

北側には登りの時は見えなかった梶ヶ森が見えた。
アンテナが何本も立っているのですぐ分かる。

歩いてきた道を振り返る。
天候はどんどん回復し、視界はクリアになっていく。

10時7分、いよいよ稜線から降る峠ポイントまで戻ってきた。
鉢ヶ森も見納めだ。

樹林帯の道へ入るが、朝の景色と全然違う。
粉雪がいい感じに地面を化粧している。

苔むした倒木にも粉雪が。
抹茶ミルク。

10時30分、あっという間に大師堂に到着。
ここでしばし、休憩だ。

境内のコンクリート階段に座り、先日購入したモンベルの水筒に詰めてきたハーブティーなどを飲む。
朝一、自宅で入れてきたのだが、まだまだ熱々。
保温性能はなかなか良いようだ。
ゆっくりしながら見上げる空。
登りの時と打って変わって穏やかな空だ。
休憩中、2人組の方が登ってきて、鉢ヶ森のもう一つの登山口の情報を得る。
今回の河野登山口よりも車でのアプローチに随分時間を取られるという。
挨拶をして先を急ぐ。

大師堂からはしっかり整備された道なので歩きやすい。
木漏れ日が差し込む道。
めちゃくちゃ感じがいい。
朝のどよんとした雰囲気は一掃されている。

道中にある二股になったウラジロモミ。

植林若木の大群と大木。
稜線の大ブナしかり、この大木にもこの若木のようなひょろひょろの時代があったわけで、一体どれくらいの年月でここまで大きくなったんだろう。
木々の時間軸は、人間のスケールに比べてあまりにも大きい。

10時53分、無事下山完了。
鉢ヶ森は変化にとんだ、なかなか良い山だった。
里山の風情を残しつつ、稜線に上がってからは自然林で奥山の雰囲気も味わえる。
ツツジの開花時期も素晴らしそうだ。
何よりマイナーな山なので、人も少ない。
静かな山旅にはうってつけだ。




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