山歩き日 2018年8月14日〜15日
”山で泊まる”
これは山の魅力に取り憑かれた者たちがいずれ必ず通過する道。
登山を始めて約四年になる私。
実は今までの山行は全て日帰り旅である。
まだ山の中で夜を明かしたことがないのだ。
もちろん今まで何度も泊まり込んで山を楽しみたい、そして撮影したいとは思っていたのだが、なかなか実行に移すことができずにいた。
そして今回。
遂に日帰り山行オンリー男の歴史に終止符が打たれる。
今回の旅の舞台は四国の名峰、剣山。
ここの頂上にある山荘に一泊して夕陽〜星空〜朝日を撮影しまくろう、そして美味しい物をいっぱい食べようとの贅沢な計画だ。
今回の同行はいつものT。
ハラハラドキドキの山泊まりデビュー戦。
いざ!
いきなりリフト写真で申し訳ない。
剣山には登山口(見ノ越)から山頂までもちろん徒歩で登ることもできるのだが、一般観光客向けにリフトも設置されていて、見ノ越(1420m)から西島リフト駅(1715m)までリフト利用で気軽に登ることが出来る。
片道1030円、往復1860円だったかな。
頂上の標高は1955mなので西島駅からの徒歩ルートの高低差は200m強と今回は本当にお気軽登山だ。
まあ今回の旅は山で食べる、寝る、そして撮ることがメイン。
のんびり行ければいいのだ。
こんな旅の方が私に合っている気もする。
楽チンは正義である。
16:48 心地よい風を受けながら音もなくスルスルと進むリフトに揺られて西島リフト駅に到着。
リフト最高。
西島駅の西側には大展望が広がっている。
奥に見える一番高いピークが三嶺だ。
少し気がかりなのはリフトに乗る前に比べると空に雲が随分増えたような気がする事だ。
とりあえず案内看板でルートを確認。
濃い青ルートの剣道ルートを進み、大劔神社から黄色の遊歩道ルートを進むことにした。
剣山の西側をトラバースして南側にある次郎笈とのコルの分岐から山頂へ向かう。
ちょうど今は剣山北側にいるのだが、ぐるっと西側を回り込んで南から登り詰めるイメージである。
このほかにもいろんなルートが整備されている。
16:54 鳥居をくぐっていざスタートだ。
ほんのり西に傾き始めた太陽を感じながら、なだらかな自然林の中の登山道を進む。
蒸し暑さはまったく感じない。
心地よい風のおかげだ。
リフトに乗る頃からずっと吹き続けている。
さすが100名山、道は綺麗に整備されている。
足元にはシコクブシ(トリカブト)の群生。
鮮やかな紫色と変な形の花が印象的。
もちろん、あの猛毒トリカブトです。
北側には丸笹山が見えている。
頂上が笹原になっているようだ。
あちらから見る剣山もなかなかの絶景との事なので、いずれ登ってみたい。
西側風景。
いよいよ雲が広がり、三嶺は雲の中に。
嫌な予感がする。
手前の稜線は、先ほどの丸笹山から塔の丸へ続く稜線。
17:13 やがて大劔神社に到着。
裏に巨大な石灰石塔がそびえている。
うーむ、それにしても。
ムムム、な空色。
先ほどまで見えていた青空は姿を消し、灰色一色の空に変化している。
せっかくの石灰石塔も空と同化しちゃっているじゃないか・・・
大劔神社から頂上へ向かう道もあるが、予定通りトラバースを続けて次郎笈とのコルを目指す。
その途中に水場。
帰ってから調べてみたのだが、この水が大変美味しいと評判だ。
飲んでみればよかったと後悔。
大劔神社から一旦道は降る。
北側にはうっすら青空が見える。
なんとか晴れて欲しい。
夕焼け撮影もそうだが、今夜は星空撮影が控えているのだ。
17:30 やがて展望所と書かれた場所に到着。
次郎笈が姿を見せる。
・・・
・・・
筈であるが、雲の中。
なかなか姿を拝めない。
前回剣山を訪れた時も、ガスで全く見えなかった。
この次郎笈の剣山側からの姿が最高にカッコイイのだ。
未だにNETか本でしか見た事ないのだが・・・
比較的晴れていた北側も雲のベールに包まれていく。
とりあえず天候の回復を信じて先へ進む。
大展望の笹原をトラバース。
天候が良ければ気持ちいい道だろう。
タカネオトギリですよね?
やがて剣山〜次郎笈の道へ出会う。
左に行けば剣山山頂、右へ向かえば次郎笈方面である。
しかしご覧の通りの天候。
ますます悪化の一途を辿っている。
時折顔に雨粒が当たりだす。
なんて・・・なんて事だろうか。
東側もこの状況。
視界が良ければ一の森なんかも見えているはずなのだが・・・
今回は泊まりという事もあってザックが重い。
出発前に計ってみると15Kg程になっていた。
そのうち約1/3が撮影機材。
カメラ1台、レンズ2本、三脚。
他に予備バッテリーや、メンテナンス道具等。
いずれテント泊を考えているが、これにテント、シュラフの重量が加算されると思うとゾッとするな・・・
山頂向けて登っていると、一瞬晴れ間が広がった。
が、次郎岌を披露してくれるまでにはならず。
17:58 やがて頂上に到着。
完全にガスの中だ。
風も強く、肌寒い。
この時点で日没まで約1時間。
夕焼け撮影は無理っぽい・・・
岩の上で格好つけている場合ではない。
前回訪れた時と同じ、ガスにつつまれた山頂表示板。
痺れます。
こうなれば長居は無用。
そそくさと木道を進み、山荘へ向かう。
綺麗にメンテナンスされている。
定期的に張替えされている様子。
頂上ヒュッテに到着。
今晩お世話になります。
素泊まり、5300円也。
リフト利用者は500円の値引きがあるとの事だった。
ありがたい!
夕日撮影も厳しいとなると、いきなり時間を持て余す。
なので早速夕食作り。
本来なら山荘内は火気厳禁との事だったのだが、生憎の天候なので1Fの洗面所の机を使わせて頂くことに。
助かります!
洗面所の横にはなんと風呂場まであった。
ここが2000mの山の頂上とは思えない。
旨い。
今回新調したユニフレームの山フライパン。
直径17cm、約170gの山用の軽量フライパンだ。
本体はアルミニウムで、フッ素加工されている。
今回野菜と肉を焼いたのだが、焦げ付きは一切なし。
ハンドル部分はステンレス鋼で、一見熱くなりそうだったがバーナーでチョコチョコ焼く程度なら全く問題なかった。
メッシュポーチも付属する。
新品価格 |
いつものお湯だけ沸かしてインスタントラーメンに比べると充実感が半端ない。
さらに新調したメスティンでご飯を炊いてみる。
これも初の試み。
いきなり炊き込みご飯にしてみる。
メスティンといえばおしゃれ山グッズの筆頭。
ついつい私も調子に乗ってしまっている。
trangia(トランギア) メスティン TR-210 【日本正規品】 新品価格 |
無洗米 1.5合
水 300ml
レトルトパウチ炊き込みの素 2合用 1袋
ネットの情報通り、米を30分ぐらい水につけておいた。
これをやると芯が残りにくくなるらしい。
炊き込みご飯の素は2合用なので少し多かったが、面倒くさいので全量入れてみた。
少し強めの弱火で15分くらい、水分が噴き出てきたら少し火を弱めて10分ぐらいだったかな。
炊き込みご飯は大成功。
やはり2合分の味付けなので若干濃いような気はしたが、芯もなく焦げ付きもなく完璧な仕上がり。
炊飯が終わると、再度フライパンで肉を焼く。
カルビと厚切り牛タン。
本当に旨すぎる。
至福のひととき。
Tも横で食べながら、銀色の空き缶を積み上げていく。
途中夕焼けを期待して外に出てみるが、ガス&雨で全く無理であった。
この調子でいくと、星空撮影も厳しいだろう。
朝一に期待だ・・・
夕食を終えると部屋に戻る。
今日は若干お客さんが少ないみたいだ。
確かにこの天気だしね。
一昨日、昨日は混雑していたらしい。
なので急な予約にも関わらず、個室が確保できた。
3帖ぐらいの部屋。
本当に綺麗。
それもそのはず、2015年に改築されているようだ。
消灯時間も過ぎて雨音だけが響く部屋。
寝転がってもなかなか寝付けない。
ここで伝家の宝刀、スマホで星空観察大会が開催される。
40代も間近なおっさん二人が暗闇の中で、頭上に掲げた一台のスマホを注視する姿を想像してみて欲しい。
いや、やっぱだめ。
想像してはいけない。
危険すぎる。
しかしこのアプリ、素晴らしい。
スマホを見たい方角に向けると、そこにある星が表示される。
つまり頭上に掲げると、今この憎い雨雲の上で煌めいている星空が見えるわけだ。
ウーム。
素晴らしい。
素晴らしすぎて、涙が溢れる・・・
ああ、山頂で満天の星空見たかった・・・
念のため2時頃と4時30分過ぎに起きて見たが、状況変わらず。
その状況は朝まで続き、相変わらずのガスと雨に包まれている。
朝日撮影も厳しい。
6:20 天候は全く回復しそうにないので早々に下山を決断。
とりあえず記念に山頂へ向かおうと思ったが、強風と雨で断念。
帰り道は最短ルートである、刀掛け松コースで下る。
雨に濡れた笹がいい感じ。
自分達にとっては憎い雨になったが、彼らにしたら恵の雨なんだろう。
Tは優雅に傘さしスタイル。
まあ、つまりレインコートを忘れていただけだが・・・
時折吹き付ける強風に傘が裏返しにされたりしながら楽しそうに遊んでいる。
カエルにも遭遇。
でかい。
ヒキガエルかな。
カメラを近づけても全く微動だにしないので、置物かと思ったくらい。
もちろんそんな訳はない。
6:42 リフト駅まで降りてきた。
昨日の観光客の賑わいが嘘のような風景。
運転開始は8:00と書いてあったが、この天候、強風では無理だろうな・・・
昨日三嶺を眺めていた場所。
今日は何も見えない。
リフトも動いてないので、徒歩で下る。
ここからも整備の行き届いた、歩きやすい道。
私は彼らを発見するとなぜか”お疲れ様デス”と声をかけたくなる。
豊かな森が育つ、良い土を作り出してくれるのは彼らのおかげ。
雨が滴るヒノキの表皮が印象的。
何枚も撮ってしまう。
うーむ、生憎の雨も森の中を撮る分にはいい感じだなぁ。
7:26 やがて登山口へ到着。
あっという間に初めての山荘泊まり旅は終了。
今回は撮る気満々だったのでイマイチ消化不良は否めない。
ただ、何をするわけでもなく、時間を気にせず山でゆっくり過ごすだけという事が本当に心地よく、贅沢な時間の使い方だなと思った。
頂上ヒュッテは本当に綺麗で、快適。
スタッフの方も親切だし、家族連れにもお勧めできる。
いいね山泊まり。
ますます山にハマりそうだ。
最後に見ノ越で朝食。
山菜そば。
雨に打たれながら下山後の体にホッと一息。
旨し。