山歩き日 2018年9月16日
山で絶景朝日写真を撮る。
これは登山を始めた頃から追い続けている、一つのテーマ。
深い深い蒼い夜が後ろへ過ぎ去り、ゆっくり目の前の空が薄紫から黄金色へ移ろいで行く。
夜の間中じっとりと森を湿らせていた足元の霧は朝日の風に逆らえず、どんどん吹き飛んで行く。
光を全身で浴びた山肌は徐々に真っ赤に染まり始める。
それを撮る私。
無心でシャッターを切る。
朝の光は足が早い。
どんどん情景は変わり、またとない世界を作っては消してゆく。
あっという間の出来事。
すっかり登りきった太陽の前で立ち尽くす。
額にはうっすら汗がにじんでいる。
よく見ると両目にも水滴が。
汗が入ったのではなさそうだ。
山よ、ありがとう。
そう言い残して私は山を下る。
その横顔は充実感の笑みで満たされている。
以上が登山を始めて約4年、未だに一度も・・・そう、もう一度言おう。
”なんと一度も” 朝日撮影に成功していない私の”理想の朝日撮影シュチエーション”だ。
脳内シュミレーターで再生されすぎて、もうテープが擦り切れそうなこの場面。
”テープが擦り切れる”という表現はすでに太古の遺物である事は重々承知の助ではあるが、この悲壮感を表すにはちょうどいい。
もうそろそろ撮らせてくれてもいいんじゃないか、山さんよ。
そんな文句の一つも口に出てきている現状。
懲りもせず、朝駆け撮影挑戦だ。
今回は単独行。
いつも同行しているTが最凶雨男説も根強く、今回はちょっぴり期待が持てるかもしれない。
目的地は瓶ヶ森。
名峰石鎚山と向かい合うように位置し、ゴツゴツ男性的な石鎚と対をなす、なだらかな笹原の瓶ヶ森は魅力いっぱい。
こちらも四国の名峰と名高い山だ。
意外にも今回初挑戦。
いざ行かん。
なんて事だろうか。
3:00 駐車場に到着した時点で、霧に包まれている事は感じていた。
さらに仮眠中にジムニーの薄っぺらい屋根を鳴らす雨音も。
しかし、天候は曇り→晴れ予報。
朝方には快方に向かうと信じて眠りについていたのだが。
日の出30分前に山頂に立てるように、4時にアラームをセットする。
起きて見ると、相変わらずのホワイトアンドレイン。
ショックのあまり、気絶。
5時再度起きて見るも状況変わらず。
完全に朝日撮影の夢は破られてしまう。
この視界で無理して歩く事はないなと思い、登山を諦めて林道を下るが、東の空が晴れてきそうな雰囲気。
急いで戻る。
しかし、やはり瓶ヶ森はガスの中だ。
この時の写真が先ほどのやつ。
真っ白で、肌寒い。
8:06 少しガスが薄くなってきたのでスタート。
登山口(1672m)には大きな駐車場とトイレがある。
8:09 いきなりの分岐点。
男山経由の女山の方へと向かう。
この女山が瓶ヶ森の頂上らしい。
雨露に濡れた登山道を行く。
徐々に霧も晴れてきたみたいで、明るくなってきた。
そして遂に青空が登場。
この時の感動をどう言い表すといいのか。
ただの枯木が偉大なる聖剣に見える。
登山道から瓶ヶ森林道が見える。
この林道はUFOラインと呼ばれ、寒風山から面河の方まで、標高1500mあたりの山肌に作られている舗装道路。
この道のおかげで1897mの瓶ヶ森にも簡単に登れる。
登山道から方角でいうと東側。
まだガスが多い。
こちらは西側。
青空が広がってきた。
このまま晴れてくると石鎚が見えるかもしれない。
笹原に出ると、目指す男山が見えてきた。
男山の名の通り、岩がゴツゴツ。
数分前にはガスガスだった東側にも青空が。
いよいよ晴れてきている。
そして遂に。
大ボス、石鎚山登場。
なんて威厳に満ちた姿だろうか。
先ほどまで憎々しかったガスが逆にいいアクセントになっている。
朝日は撮れなかったが、この一枚で十分取り返せた気がする。
まだ男山へ到着していなかったが、歩くのもどうでもよくなりしばらく立ち止まって次から次へと移り変わるガスの形を吟味しながら撮る。
レンズも取っ替え引っ替え。
同じ場所から58mmで。
フォクトレンダーのノクトン58mm f1.4。
私がめちゃくちゃ大好きなレンズ。
開放ふんわり、絞るとピシッ。
山以外でも絶賛活躍中。
今日は3本のレンズ持参。
24mm、58mm、135mm。
少しでも軽量化したい山登りで、単焦点レンズ3本持ちはキツイ。
ズームレンズで1本にまとめるとか色々方法はあるがやはり写真ありきの登山でもあるので。
好きなレンズで撮りたいのだ。
こちらは135mm。
神レンズと名高いaposonnar。
最近購入していたが、登山でなかなか使用できず。
今回初使用。
すごい解像力。
pcで等倍画像を見ると山頂の神社がくっきり見える。
ブログサイズの写真ではちょっともったいない。
星撮影には最高のレンズとの評判もあり。
楽しみ楽しみ。
弱点は重さかな。
920gなり。
中央のこんもりした山が筒上山。
そこから左へ手箱山。
石鎚登山口で有名な土小屋から登るのが一般的。
5月に登った岩黒山からさらに縦走するルートだ。
この時も散々な目にあっていたな・・・
岩黒山への道も十分素晴らしいが、さらに先は原生林に覆われた、魅力的な道だという。
いずれ訪れて見たい。
雲海とウラジロモミが点在する笹原のコラボが完璧すぎる。
ほとんどラピュタの世界。
ちなみにこの瓶ヶ森の西麓に広がる平原は氷見二千石原という。
粘り勝ち。
遂に平原のガスが一瞬完全に晴れた瞬間パシャリ。
すんばらしい眺めだ。
来てよかった。
しばらく立ち止まっていたが、ようやく先へ進む。
手前の岩肌がちょっと露出したおにぎり山は子持権現山かな?
その奥に筒上山、手箱山の稜線。
すんばらしい。
足元には花が増えて来た。
シコクフウロ。
アキノキリンソウ?
うーむ、花は難しい。
全然覚えられないな・・・
8:50 あっという間に男山頂上着。
小屋と祠がある。
祠越しに石鎚。
それにしても、青空最高。
この頃になると、朝日撮影断念の事などすっかり忘れている。
目指す頂上はまだ先だ。
なんて完璧なロケーションだろうか。
住みたいぞ、ここで。
少し休憩し、女山を目指す。
こちらも絶賛絶景中の様子。
林道が良く分かる。
こんな感じでありえない所に道が付いている。
手つかずの自然を残すという観点からは?ではあるが、この林道のおかげでこの界隈の山へのアクセスは抜群。
高山の季節は完全に秋へまっしぐら。
今年も賑やかな季節がやってきた。
すんません、なんて花?木でしょうか?
上空には飛行機雲か一筋。
緩やかな快適な道を進む。
ザクザク進むとあっという間に女山頂上なのだが、いちいち写真を撮るので随分スローペース。
まあ、なにか到着するのが勿体ない感じもするぐらいの素晴らしい道だ、ゆっくり行こう。
道の脇にはリンドウがたくさん。
陽をあびた者たちから開き始めている。
秋だねぇ。
なんて思っていてもあっという間にここまで来た。
あと少しで山頂だ。
女山頂上を視界に捉える。
何人かいる模様。
9:10 遂に瓶ヶ森頂上に到着。(1897m)
10人ぐらいの人が休憩中だった。
それでもまだまだ広々のしている。
着いた直後、ガスにすっぽり包まれてしまう。
まあ急ぐ必要は全くない。
パンをかじりながら晴れるのを待つ。
やがて。
再び石鎚が顔を出す。
頂上待機の人々が一斉に写真撮影スタート。
私も負けじとカシャカシャ。
こんなにお手軽登山でこの景色を見られるのは本当に幸せ。
最高だ。
縦で。
モノクロでも。
ずっと撮り続けてしまう。
雲海が常に形を変えるので、飽きることがない。
隣のおじさんもこれじゃなかなか帰れないよと言いながら撮りまくっていた。
ホントそうです、帰れない。
北側を撮る。
大山かなにか見えるっと皆さん言っていたが、どうだろう?
画面中央少し左側に山のような物が見えるといえば見えるのだが・・・
しかしいつまでもはいられない。
9:56下山開始。
笹原の海を下る。
太陽を浴びて、キラキラ輝いている。
ウラジロモミの林の脇を通過する。
土小屋周辺にもウラジロモミの純林帯があったが、ここ瓶ヶ森でも見ることができる。
広大な笹原にウラジロモミやダケカンバ、モミやツガが点在している。
そこを縫うように登山道。
その配置が絶妙で、さながら庭園のようだ。
女山山頂を振り返る。
笹原がなにか、サメ肌の皮膚のようだ。
10:10 分岐に到着。
ここから氷見二千石原を駐車場へ向けてほぼ水平に移動する。
ここでちょっと寄り道。
テント場を偵察に行く。
本当は前日夕方入りして、このテント場で宿泊予定だったのだ。
だが天候が良くないので回避、本日の朝駆けに変更している。
とりあえずどんな所か見ておきたい。
分岐を曲がると、すぐにウラジロモミのトンネルに突入。
いい雰囲気。
この道がきのこだらけ。
道の両サイドに数多のきのこがニョキニョキ。
何て名前だろうか?
何者かにかじられている。
分岐からほどなくキャンプ場に到着。
奥の裸地で設営するのだろうけど、広い。
残念ながら石鎚はガスに包まれてしまって見えないが、多分最高のロケーションだろう。
分岐まで戻り、駐車場方面へ向かうとすぐに避難小屋が見えてくる。
結構新しい。
横に見えるのは瓶ヶ森ヒュッテ。
残念ながら現在営業はしていない様子。
トイレもある。
綺麗なトイレ。
トイレットペーパーも常備されていた。
ただ冬期は使用禁止との事。
テント場にトイレはないが、ここまで歩いても2~3分程。
避難小屋を跡にして駐車場へ向かう。
ガスが勢力拡大中。
道はほぼ平坦で、なおかつしっかり整備されている為歩きやすい。
登山道というより遊歩道という感じ。
やがて男山への分岐地点に到着。
左へ行くと男山へ直登なのだろう。
鎖道と書いてある。
右へ行くと白石小屋。
こちらも現在営業休止中との事。
第二キャンプ場と書いているのでテント場もあるみたい。
ただあまり人が入らないのか、両方とも若干の笹漕ぎが必要な感じの道。
今回はスルー。
山側にはなんとか青空。
しかしこれが見納めとなった。
やがて瓶壺への分岐に到着。
地図には瓶壺に水場マークあり。
しかしここも笹漕ぎが必要な感じ。
石鎚山ロープウェイ駅のそばの西ノ川へも行ける。
やがて樹林帯が迫ってきた。
いよいよ駐車場は近い。
背景は真っ白に。
笹原の大展望もいいが、やはり森へ入ると落ち着くなぁ。
多くの登山者にとって展望が効かない樹林帯は我慢の道などという人もいるが、私にはまったく当てはまらない。
もちろん単調な植林帯が永遠に続くと嫌にもなるが・・・
自然林の中は被写体で溢れている。
さらに歩みが遅くなる。
森へ入るとやはり光量は減る。
なので手持ちでザクザク撮るには明るいレンズがあれば重宝する。
この24mmはボケも凄い。
山でもどんどん開放付近で撮りたくなる。
こんな感じ。
f2.5で。
広角レンズとしては圧倒的なボケ。
普通の切り株がしっかり浮かび上がる。
重いし、高価だったが最高である。
朽ち木にきのこが!
すごい数!
10:45 無事帰還。
駐車場は車で埋め尽くされている。
まわりの空は出発前の状態に逆戻りしていて、改めていいタイミングで登れたと実感。
日頃の行いが良すぎるかな?
瓶ヶ森は本当に素晴らしい山だった。
なにより氷見二千石原が完璧な山岳風景すぎる。
四国には笹原の山が多いのだが、そして自分もそれが大好きなのだが、ここの風景は1、2を争う、と思う。
西側笹原のエッジからストンと傾斜がついているので、空中庭園感がすごい。
さらに石鎚山の展望台として一級品。
瓶ヶ森からの石鎚山は迫力満点。
さらに駐車場から頂上まで標高差200m程度しかないので、簡単に登れる。
避難小屋、トイレもあるし、テント場も整備されている。
道はしっかり整備されているし、危険個所も特にない。
ファミリーハイキングにもうってつけだし、登山を始めたばかりの人にも本当におすすめ。
山慣れた人もこの景色は飽きないんじゃないかなぁ。
ただし冬季は林道が閉鎖されてしまうので、なかなか厳しい山になる。
でも雪原に浮かぶ石鎚、いずれ撮りたい。
また近い内に訪れたいデス。
※ちなみに林道は見通しの効かないカーブも多く、観光シーズンは対向車も多い。
慎重な運転が必要です。