森の旅 

To the world where you've never seen.

岩黒山 夢は次に取っておこう~ 朝日撮影

約5分


山歩き日 2018年5月4日

決して貼り間違えではない。
この1枚目の写真の事である。
名峰石鎚山の南側に位置する、岩黒山山頂にて。
春もうららか、みんな大好きGWも終盤戦の5月4日。
柔らかい陽光の下にアケボノツツジが咲き誇り、多くの木々から薄黄緑色の若葉がもそもそと噴出する頃。
鳥たちの掛け声は山間にコダマし、足元には数多の草花たちが我先にと領土拡大に邁進する頃。
ふんわり頬を撫でて行くそよ風にああ春だと感じる季節だ。
長く続いた氷と雪の時間は過ぎ去り、融解したその水は山全体を潤し、植物たちにとって甘い、甘い蜜となる。

そんな、春爛漫な一枚。
そうなる筈だった。
だが現実はこれだ。

昨日の謎の寒波襲来により、まるで一気に初冬まで逆戻りしたかのような、寒々しい風景。
熊笹には粉雪が振り掛けられ、上空の空色は真冬のロンドン(もちろん訪れた事などない)を思わせるような、鈍い鈍い鼠色。
写真では分かりづらいが、猛烈な風も吹き付けている。
Tが持参したミニ温度計は丁度0度を指しているが、体感温度は更にずっとずっと低く感じる。

今回GW山行として土小屋からの石鎚山登山を計画した我々。
同行は相変わらずおなじみのT。
ただ、普通に登るだけでは勿体ないので、早朝軽〜く反対側にある岩黒山へ登り、朝日を浴びて真っ赤に輝く石鎚山をカメラに収めたのち、再度石鎚山へ登ろうと思っていたのだ。

だが岩黒山山頂で待ち構えていたのはあまりに厳しい現実。
朝日の”あ”の字も望めそうにない天候。

奥に見えるはずの石鎚山は厚いガスに覆われている。
強風が麓から吹き上げてくるたびにガスが生き物のようにちぎれたりくっついたりしながらこちらへ迫ってくる。

反対側に目を向けてもこの状態。
少しガスが晴れたと思っても、次の瞬間には真っ白に覆われてしまう。

頂上でガスが晴れるのを待つT。
朝日が望めない絶望感と、容赦なく吹き付けてくる冷凍旋風により完全に固まってしまっている。
私もそうだが、GWの時期だし、更に天気予報は”快晴”という事だったので重厚な防寒装備を持ち合わせていない。
背中越しにおそらく太陽があるのだろう、雲間が明るい部分もあるが、まるで晴れる気配はない。

眼下の山肌の木々の間を駆け上がるガス。
登頂開始が4:20、山頂着が5:20、ほぼコースタイム通りだったわけで、そこからしばらく晴れるのを信じて待っていたのだが、6:00ジャストついに諦めて撤収とした。
この風と寒さにはもはや頂上待機も40分が限界。
これ以上は本当に危ない。
無念である。
そもそも天気予報では雲ひとつない快晴マークなのに。
なぜだ・・・
あまりに非情な仕打ちではないのか・・・

若干回復基調の天候を尻目にどんどん下る。
土小屋へ下山した後、朝食休憩の後石鎚山へ向かう予定だが、この天候だ、さてどうしようか?
せっかく登って展望がないのは堪えるのだ・・・
そんな心配をよそに目に入ってくる岩黒山の自然林の素晴らしさ。
行きは真っ暗闇で全く見えなかった。

その中をTは死神のようにフードを目深に被り込み、無表情でフラフラと先を急ぐ。

満開のアケボノツツジが寒そうにしている。
彼らもたまったもんじゃないだろう。
長い冬が終わり、ようやく暖かくなってきたので精一杯花を咲かせたとたんのこの仕打ちなのだ。
文句の一つや二つ言わしてやりたい。

大きな岩を巻く。
凍結はしていないようだが狭いので慎重に。

ウラジロモミ。
登山口である、土小屋周辺にはウラジロモミの純林地帯が広がっている。

それにしても寒々しい。
この写真が5月に撮られたものだと思える人はいないだろう。

熊笹に積もる粉雪とアケボノツツジの競演。
まあ、しかしこの組み合わせも案外いいかもしれない。
なかなかお目にかかれるものじゃないような気がする。

ただ、やはり春です。
木々たちの新芽が芽吹いてきている。

しばらく行くと今度はダケカンバの群生。
新緑にはもう少し。

それを過ぎると再びウラジロモミの林になる。
ところどころ写真を撮りながら6:52下山完了。

今回初めて登った岩黒山。
土小屋の標高が1492m、岩黒山頂上が1746mなのでその差約250m。
距離にしてピストンで約3km。
非常に短いルートだが、アケボノツツジに始まり、ブナ、ダケカンバ、ウラジロモミの豊かな自然林が素晴らしいルートだった。
さらに頂上は360°の大展望が可能。
もちろん天候が良ければ、だが。
登山道自体もしっかり踏み後もあり、各段危険個所もないので、天候さえ良ければ快適なハイキングコースとして申し分ない。

さて戻ってくると駐車場は登山客の車で溢れかえっている。
昨日夜半過ぎに到着したころはまだまだスペースはあったのだが、今ではもう停める所はないほどだ。
とりあえず休憩。
ガスバーナーでお湯を沸かし暖かいカップの豚汁スープとおにぎりで朝食だ。
暖かい・・・
生き返る・・・

相変わらず天候は回復と悪化を行ったり来たり。
時折日が差したかと思ったら、しぶったいみぞれが降ったりもしている。
冷たい風も相変わらず吹きまくってとにかく寒いままだ。
石鎚山頂は暑いガスに覆われており、なかなかスタートする踏ん切りがつかない。
駐車場に止まっている他の人々も同じ気分なんだろう、車中で待機している人が沢山いる。
我々も暖房の効いたヌクヌクの車中で休むこと約1時間。

8:00 天候もだいぶ回復してきたようなのでようやく重い腰を上げる。
とりあえず石鎚山頂を目指す事とした。

次回へ続く。




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