森の旅 

To the world where you've never seen.

西赤石山 アケボノツツジに誘われて

約8分


別子銅山は愛媛県新居浜市の南部に位置する、赤石山系を中心とした銅山。

1690年から1973年まで、実に283年にもわたり銅を産出していた、日本を代表する銅山だ。

最深部は海抜-1000mにも達し、坑道は全長700kmにも及んだという。

もちろん、それだけ人の手により開発されたという事は、山の本来の自然環境にとって都合が良い事ではなかっただろう。

森林伐採はもちろん、銅精錬時に排出される亜硫酸ガスによる酸性雨の為に樹木の多くが枯れてしまった。

1939年、ようやく中和施設が開発され煙害対策に目途がついたが、長きにわたり大きな被害をもたらしたのだ。

閉山して40数年、今の緑豊かな赤石山系の姿からは、当時のはげ山は想像できない。

ただ、大木がほとんどなく、ツツジ等の低木、灌木に覆われた山頂がまだまだ回復途中なんだと考えさせてくれる。

今回は赤石山系の中でも西方に位置する、西赤石山を訪れてみた。

西赤石山は山頂北面斜面に広がるアケボノツツジの群生で有名だ。

今回もTと同行。

7:00 日浦登山口からスタート。

とにかく、今日は登山客が多い。

駐車場はすでに満杯。

多くの車が路肩に駐車している。

小足谷川沿いの緩やかな道を行く。

この道は銅山遺跡観覧コースにもなっていて、当時の小学校や病院跡を見ながら進む。

当時の建物は残ってないが、土台となった石垣や、レンガ作りの壁など、苔むしたその姿に当時の生活を想像する。

ダイヤモンド水広場を過ぎ、8:30銅山越に到着。

ここからは西赤山頂に向けて稜線歩き。

ぽつぽつ現れるミツバツツジに目を奪われながら、明るい雑木林の中を進んでいく。

歩きやすい、整備された道が続く。

しかし、今日は、暑い。

風も時々フワッと吹く程度で、ほぼ無風状態。

汗が出る。

そのせいか、妙に疲れる(^^;

前回(2週間前)の平家平では手がかじかみそうやったのに。

山頂へ近づくとアケボノツツジの姿が増えてくる。

10:00山頂着。

多くの人でごった返している。

とりあえず、数枚写真を撮って、山頂北側に見えるかぶと岩へ向かう事にした。

手前のゴツゴツした赤い岩山の三角錐がかぶと岩。

その奥には1388m峰。

それを越して、うっすら見えている街並みが新居浜市だ。

このかぶと岩から見る西赤石北側斜面のアケボノツツジの大群生が一番のビューポイント。

一旦山頂から急登を下らなくてはならないが、行く価値はある。

梯子やロープが張られた斜面を下っていく。

15分程で到着。

振り向くと・・・

ピンクの絨毯・・・

とまではいかなくても・・・

ピンクのパッチワークが眼前一杯に広がる。

惜しむらくは南向きの為、時間的に完全に真逆光になってしまった事。

空が白く飛んでしまって曇り空みたいになってしまった(^^;

ここで大休憩。

多くの登山者も思い思いの場所で休憩したり、風景を眺めたりしている。

帽子を顔にかけて寝ている人もいれば、撮影に夢中な人、仲間とおしゃべりに熱中している人・・・

とにかく、賑やかだ。

素麺とおにぎりのランチを済まして、あんまりにも気持ちが良いので横になる。

ザックを背に帽子を顔に引っ掛けていると、本当にウトウト、10分程度寝てしまった。

何処でも寝れるのは特技の一つだ。

起きて改めて撮影タイム。

赤石山というだけあって、赤い岩石。

十分撮影を堪能したのでそろそろ出発。

先ほど下ってきた山頂直下の急登を登り返さなくてはならない。

ヒィヒィ言いながら西赤頂上まで戻ると、大渋滞。

どうやら関西からの団体さんらしい。

かぶと岩へは向かわず、東赤石へ縦走するという。

もともと我々もに行けるところまで行こうという計画。

11:30 頂上出発。

西赤からなだらかに下りながら、次のピーク物住頭(1635m)へ向かう。

この道も快適。

ただ・・・

暑い!

中央に見えている一番近いピークが物住頭。

その奥に見えている岩山が前赤石山(1677m)だ。

イシヅチサクラだろうか、このルートで所々で見かけた。

稜線上のルートから南側斜面に広がるカラマツの植林。

日本の野生で唯一の落葉針葉樹との事だ。

新緑の黄緑色が美しい。

針葉樹という物はヒノキやスギのようにすべて常緑樹だと思っていた。

カラマツは硬くて丈夫、そしてスギやヒノキ等が成長できない厳しい条件下でも生育でき、その成長も速いという。

だが、歪みが出やすく、ながらく建築材としては不向きとされていた。

その為、主な利用目的は鉱山のトンネルを支える杭木や電信柱。

現在この南斜面に広がっているカラマツがいつ頃植えられたかは分からないが、おそらくそういう目的で植えられた名残じゃないのかなと思う。

カラマツの周りを灌木が取り囲んでいるので、閉山後そのまま放置されたのではないだろうか。

近年加工技術が発達し、カラマツの弱点は克服されつつあり、その強健な性質に注目が集まっているという。

この森の姿もいずれどうなるか分からない。

まだ銅山による爪痕は残り続けている。

急登を上り詰め、歩いてきた稜線を振り返る。

水平距離で約1.5km。

12:20 物住頭に到着。

東側に目をやると、前赤石の岩峰がドカンと広がる。

ごつごつした岩と、鋭角な山頂がカッコイイ山だ。

東赤石へはこの山を越えていかなくてはならない。

幸いトラバース道もあるらしいが、ここから見る限りルートはイマイチよく分からない。

休憩中に東赤石からの縦走者が次々と通過していく。

さらに、例の関西の団体さんが追い付いてきた。

我々はここで引き返す事に決定。

東赤石への縦走はまた次の機会に。

来た道を戻る。

西赤山頂は少し減ったが、まだまだ多くの人で賑わっていた。

休憩&撮影を少しして、13:30下山開始。

この時間でも、多くの人がまだまだ登ってくる。

この先の下山ルートを見つめるイマイチ変な形の帽子を被った男が一人。

彼はこの新型ハットを登山用にわざわざ取り寄せまでして手に入れている。

機能的にも、ビジュアル的にも、コスト的にもまったく非の打ちどころがない完璧な帽子だと豪語していたが・・・

タンポポの綿毛が飛ぶか飛ばないかぐらいの本日の微風でもツバがめくり上がり機能不全に。

登山していて完全無風の時ってあるのか?

まあお気に入りなら仕方ない。

そっとしておいてあげよう。

帰り道は銅山越ではなく、ショートカットルート。

本来登りはこのルートで行く筈だったのだが、分岐をスルーしてしまい、泣く泣く銅山越ルートにした経緯がある。

ただ、このルートはひたすら急登を下る厳しいルートだった。

登りで使わなくて良かったかもしれない。

その分歩いている人が少なく、静かに歩けるのだが。

新緑の雑木林に光が差し込む。

カラマツの若葉。

まだ淡い黄緑に癒される。

途中週に数回ここを訪れるという方に出会い、ルート案内をしてもらいながら下る。

このルートで出会ったのは唯一この方のみ。

所々テープはあるが、この辺りは迷いやすいという。

大変助かりました、ありがとうございます(^-^)

延々と続くかと思われたルートを下りきり、朝通過したメインルートへ合流。

ショートカットルートは接待館跡の横へ出た。

遺構も森に包まれつつある。

15:50下山完了。

いや~疲れた。

本当に、今日は疲れた。

でも思いっきり楽しめた。

西赤石山は、歴史と、植物と、絶景と。

あらゆる登山の醍醐味がギュッと濃縮されたような山だった。

人気があるのも頷ける。

毎回そうだが、「また行かねば!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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