この前PCの過去写真を眺めていると、不意に登山を始めた頃の写真に目がとまった。
土佐矢筈山。
忘れもしない、私が登山を始めて、一番最初に登った山。
約3年前、突然の閃きでザックと登山靴を買い揃え、当時周りの友人に登山を嗜むような者は皆無だったので、ガイドブック頼りに選んだ山だ。
お手軽登り約1時間、初心者やファミリーハイクに最適との言葉に踊らされ、更に稜線の笹原の写真がとてつもなく魅力的で、この山しかないっと即断したものだった。
しかし。
いざ登り始めてそのしんどい事、しんどい事。
数歩歩いて休憩、数歩歩いて休憩の強制牛歩戦術状態。
確かに運動なんて暫くしていなかったが!
これが本当にお手軽な山なのか?
ガイドブックの体力度★☆☆は正解なのか?
登山とはこんなに辛いものなのだろうか?
道中何度引き返そうかとした事か。
それでも何とか頂上へ辿り付き、吐き気を催しながらも、その絶景のあまりの素晴らしさとも登り切った達成感でひどく感動したものだ。
今も登山を続けているのも、この初っ端の感動が未だに残っているからだと思う。
という事で。
今週も南嶺でトレーニングの予定だったが、予定変更。
今回の山行はカムバック土佐矢筈山。
ついでに前回実現出来なかった、小檜曽山への縦走も織り交ぜて。
5:35 まだ薄暗いアリラン峠を出発。
天候は笹曇り。
登り始めは樹林帯を行く。
前回は5月の新緑直前だったのでそんなに感じなかったが、鬱蒼と薄暗い森は不気味だ。
熊注意の看板も気になる・・・
一心不乱に先を急ぐ。
約30分で樹林帯を抜け、展望が開けてきた。
東側には笹原を抱いた綱付森が見えている。
峠で少し見えていた朝日はどうやら、分厚い雲に覆われてしまったようだ。
北側からガスも湧いてきている。
どうやら思った以上に天気は悪いようだ。
それに肌寒い。
笹原を進んでいると、不意に2頭の鹿に遭遇。
警戒音を出しながら、あっという間に稜線の向こうへ消えた。
うーむ、望遠レンズを付けていなかったのが悔やまれる。
約1時間で分岐へ到着。
山頂に薄っすらガスが掛かり始めている。
急がなくては。
分岐から5分で山頂着。
しかし、残念、ガスに覆われてしまった。
山頂からは天狗塚~三嶺、更に剣山まで望めるらしいのだが。
何とか粘って撮れたのが上右の写真。
次々に北から南へガスが流れてきて晴れそうもない。
諦めて山頂から分岐へ戻ると、先程より状況は悪化しており、一面真っ白。
さて小檜曽山への縦走はどうしよう?
せっかくの笹原絶景がほぼほぼ視界0ではテンションは上がらない。
だがトレーニングも兼ねた山行だと思い直し、先へ進む事にする。
それにしても、寒い。
気温は不明だが、風も少しあるのでTシャツ一枚ではとても耐えられなくなり、レインジャケットを羽織る。
汗もそんなに出ないし、この前の大山や南嶺に比べても疲労感は少ない。
もちろんルート強度に差はあるが、やはり酷暑が大きく体力消耗に影響しているのだと実感。
少し行くと樹林帯に突入した。
風も弱まり、少しホッとする。
しかしこの森は枯れ木が目立つ。
老木の倒木もあるが、それよりも若木の枝が無数に落ちているのが気になる。
先程見かけた鹿と無関係ではないだろう。
写真を撮りながら、どんどん進むが相変わらず、ガスは晴れない。
更に朝露たっぷりの笹原をずっと歩いていたので、遂に登山靴に水が染みてきた。
不快極まりないが、どうしようもない。
樹林帯を抜けると、笹原の大平原。
のハズ。
辺り一面真っ白でイマイチ分からない・・・
ただ笹原に刻まれた登山道は明瞭で迷う事はない。
足元にはチラホラ、紫の花。
ツリガネニンジン?
花の名前も全く分からない^^;
数回アップダウンを繰り返し、ニセ小檜曽山へ到着。
しっかりした山頂看板もあり、表記も小檜曽山となっている。
このピークは笹という別名もあるようだが、とにかく小檜曽山としては偽物との事。
本当の小檜曽山山頂は更に先にある。
ニセ小檜曽から少し下り、本物の山頂との間の鞍部にある京柱峠へのルートの分岐を通過。
登り返すと、またしても立ち枯れが目立つ樹林帯に入る。
土佐矢筈山から1時間40分、本物の小檜曽山に到着だ。
コースタイムは1時間10分とあるので、かなり遅い。
いやいや写真を撮るために、何回も立ち止まっているからサ・・・と自分を慰ながら休憩を取る。
山頂からは相変わらずのガスに包まれた景色。
ここまで歩いてきた稜線が一望できる絶好のポイントなのだが・・・
残念。
遠方から聞こえてくる鹿の警戒音と、風の音だけを聞きながらオニギリで栄養補給。
やはり太陽が出ないと肌寒い。
他に登山客は誰もいない。
しかし、しばらく休んでいると・・・
ガスが少しずつ晴れてきて・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
キターー!!
日頃の行いの良さには自負するものがあったのだが、まさか本当に晴れるとは。
青空まで顔を覗かせている。
画面左側の枯れ木の辺りが先ほど通過した樹林帯、手前のピークがニセ小檜曽山、それから延々となだらかな笹原の縦走路の先に、土佐矢筈山だ。
しっかり休憩も取り、帰路につく。
この絶景の中を歩けると思うと足取りは軽い。
ただ青空はどうやらあのタイミングの一瞬だけだったようだ。
ガスはすっかり晴れたが上空の雲は重苦しいままだ。
なだらかな笹原の道を行く。
往路では真っ白でイマイチ感動もなかったが、改めてこの縦走路の魅力を再認識する。
矢筈山手前の樹林帯まで帰ってきた。
ガスが晴れた為、幽玄な雰囲気はすっかり消え失せている。
その樹林帯越しに歩いてきた稜線を眺める。
本当に素晴らしい。
小檜曽山から約1時間、土佐矢筈山直下の分岐に到着。
一応リベンジ、再度土佐矢筈山へ登り返す。
綱付森は何とか見えたが、天狗塚、三嶺、剣山方面はギリギリのところで雲に遮られて見通せない。
暫く待ってみるものの、晴れそうにないので下山だ。
分岐を左へ、いよいよ笹原ともお別れだ。
その時。
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
キターー!!
遂に画面一杯の青空登場。
グヌヌ、今から下山って時に!!!
なぜ急に!?
曇り空でもガスが晴れただけで大感動だったが、この青空の下を歩けばまた違った感動を生んでいた筈だ。
後ろ髪を引かれる思いで先へ進む。
下る斜面越しに、天狗塚まで見えてきた!
くそう!!
あと10分、下山を遅らせていたら、頂上から撮れたかもしれない。
確か良い風景写真を撮るには待って待って待った人にご褒美が舞い降りると聞いた事があるが・・・
ムムム。
まあ、しかし、それも登山。
仕方ないのです。
ほどなく笹原を抜け、樹林帯へ突入。
驚く事にすでに紅葉が始まっている樹もあるようだ。
登りの時とうって変わって木漏れ日の、明るい森を写真に収めながらどんどん下る。
特に大木や苔むした老木があるわけでもないので重厚な森というよりは、軽やかな、若い元気な森といった趣だ。
分岐から約1時間、無事駐車場へ到着。
いやぁ、今日は本当に濃密な時間を過ごせた。
3年前には諦めた小檜曽山への笹原も遂に歩くことが出来た。
それぞれ行きと帰りで全く違う天候になったので、ある意味得をした気もする。
記念すべき初登山の山。
今日はいろんな表情で優しく迎えてくれたような気がして、やっぱり最高だった。
次はいつ来れるかな?